2015-02-23

『争いから交わりへ』

 ルーテル世界連盟(LWF)とカトリック教会が2017年の宗教改革500年を共に記念するために、両教会の世界規模の合同委員会が議論を重ね、昨年その成果を一つの形として文書にし発表した。1999年に両教会は「義認の教理に関する共同宣言」を公に調印して、キリスト教界にエキュメニズムの新しい時代の到来を示したが、さらに具体的に両教会の協働が合同の礼拝をもって続けられるように、宗教改革500年が覚えられることは本当に画期的なことだ。その基礎となる文書なだけに、この書がいち早く日本語に翻訳出版された意義は大きい。


http://www.kyobunkwan.co.jp/publishing/archives/16965

翻訳チームの一人として加えられたが、元訳を鈴木浩先生がいち早くつくってくださり、それをもとに、カトリック教会と日本福音ルーテル教会からの代表が半年以上をかけて出版に向けて翻訳を丁寧に造り上げた。
 本来、1517年の宗教改革は、M・ルターが「贖宥の効力に関する95ヶ条の提題」を公にして、いわゆる「免罪符」(贖宥券が正しいが、免償符でもよい)の問題をきっかけにカトリックに対して改革を呼び掛けた教会運動だった。けれども、結果的にはそれまでのカトリック教会の一致を分つことになったわけだから、プロテスタント教会にとっては自分たちのアイデンティティーを示す記念、祝いの気持ちを持つかもしれないが、カトリック教会からすればこれは少しも喜ばしいことではない。だから、この日は一緒に「祝う」(celebration)はできない。「記念する」(commemoration)という言葉遣いだ。
けれど、いずれにしても、福音を世に伝えるとう使命と喜びを確認し、歴史的な断罪を改めた両教会が協働・共同する世界への宣教のコンテキストを意識して取り組まれていることは本当に意義深いことだ。
 この文書は、両教会がそれぞれの歩みを神学的に検証しつつ、新しい世紀への教会の在り方を示そうとしていると言ってよいだろう。
 神学生には必読の書。

内容は下に目次を紹介する。
ルターの宗教改革的神学主張が、カトリックとルーテルの双方からの視点を合わせつつ評価を加えて確認されている。詳しく検証される必要があるが、こういう文書が共同で出せるというところが今の新しい時代を象徴するできごとだと思う。そして、なにより大事なことは、新しい時代にむけたエキュメニカルな責務を明らかにしていることだと言えるだろう。



第一章
エキュメニカルでグローバルな時代に宗教改革を記念する(4−15)
第二章
マルティン・ルターと宗教改革を見る新たな視点(16−34)
第三章
ルターの宗教改革とカトリック側からの反応に関する歴史的描写(35−90)
第四章
ルーテル教会とローマ・カトリック教会の対話に照らして見た
マルティン・ルターの神学の主要テーマ(91−218)
第五章
共同の記念に召されて(219−237)
第六章
五つのエキュメニカルな責務(238−245)

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